信州ドキュメンタリー映画の現代史『大日向村の47年 満州移民・その後の人々』が8月27日(土)に長野市で上映されました。昨年は佐久穂町の茂来館などで上映されて評判を呼んだ作品、本日はそちらのレポートになります。当地域の方はもちろんのこと、昭和史のドキュメンタリーとして誰にも欠かすことのできない作品です。
長野県南佐久郡の山間にある大日向(現・佐久穂町)は、かつて「大日向村(おおひなたむら)」と呼ばれ、昭和13年、村の半分という大規模な開拓団を旧満州へと送りました。模範的な農村の姿として小説や映画が製作されるなど、一躍日本中で注目される存在となり、全国で多くの満州開拓団を輩出するきっかけともなりました。しかし、満州国建国の理念であった「王道楽土」の夢は、たった8年で敗戦により崩れ去り、満州大日向村を脱出した人々は団員の半数を亡くし、母村大日向村に引き揚げます。しかし、財産は一切処分していたため、その故郷にとどまることもできず、新たに浅間山麓に開拓の地を求めます。こうして軽井沢町・大日向という二つの大日向が誕生することになります。
映画は昭和59年6月、1台のバスが走るシーンから始まります。佐久の大日向の人々が軽井沢の大日向の人々との交流会に参加するために出向きます。満州に移民した人々が語る強烈な体験は過去の歴史ばかりでなく、今を生きる歴史といってよいかもしれません。46年という時間が経過し、さらに映画が製作されてから36年の時が経ちますが、未来永劫、地域の人々が引き継ぐべき体験であると感じざるを得ない秀作ドキュメンタリーです。
※詳細は「長野映研」さんにお問い合わせいただければと思います。
なお、本映画製作にあたっては、佐久総合病院が協力しています。昭和27年には院内に映画班が発足し、地域住民に向けた保健衛生や病院の記録映画の製作を始めるなど文化活動の分野でも地域の草分けでもあったようです。『大日向村の46年』は1986年度キネマ旬報文化映画ベスト・テン第2位を受賞。監督はじめ素晴らしいスタッフとともに、地域医療の核である佐久総合病院の役割も記しておきたいと思います。